ビジョンとは一体何なのか? 〜組織のビジョンを決める2つの思想と4つの型〜

 

こんにちは、株式会社インキュビット代表の北村尚紀です。

先日「組織の価値観は4つの視点で作られる 〜インテグラル理論で記述するインキュビットの企業文化〜」と題して、組織文化について明文化する際のフレームワークを紹介させていただきました。
自分で書いた人生初めての記事だったのですが、読んでいただいた方から「分かりやすかった!」「今度自分の組織でも使ってみる!」と嬉しいお言葉をたくさん頂きました。

今回は、その組織文化とともに整理を進めていた「ビジョンとは何か?」という問いに対する自分なりの答えについて書いてみます。

この「組織のビジョン」についても、まだまだ僕個人の体験と思想をベースにしたものであり、組織への応用と実践はこれからがんばっていくところです。
一年後くらいに、この仮説をベースに実証した結果を発表します。

目次

  • ビジョンの作成のそもそもの動機
  • ビジョンとはツールである
  • ビジョンの元となる2つの思想
  • ビジョンの4つの型
  • 絶対条件は一貫性
  • 僕の思想と願い
  • 価値観維持型x自律分散型なビジョンを創るプロセス

ビジョンの作成のそもそもの動機

前の記事でも書きましたが、 僕は創業から2年間、株式会社インキュビットという会社をほぼ1人で経営してきました。
大学生のインターンやフリーランスの方々と一緒に仕事をする機会はあったのですが、正社員はいませんでした。

そして2年も経てば1人で経営する状態にも慣れ「次のチャレンジがしたい!」「組織として人を雇って会社を大きくしたい!」という考えに漠然と至ったわけですが、「優秀な人と大きな成果を出す組織にするにはどうすれば良いのか?」「優秀な人がなぜ今の会社を辞めて、この会社に来るのか?」というような問いにぶつかります。

そこで2年前に「魅力的な組織とはどんなものなのか?」という事を調べていった結果「Vision/Mission/Value」という言葉に初めて出会いました。

ビジョンって結局何なんだ

ということで、「Vision/Mission/Value」のうちのビジョン(Vision)というものをさっそく策定しようと頑張ってみたのですが、世間で言われているこのビジョンとやらはとても曖昧なもののようです。

軽くググって見ると、

  • 組織として目指す方向性
  • 組織としてありたい姿
  • 未来の目的地

といったような定義が一般的にはされているようですが、

  • 「ビジョンがなぜ必要なのか?」
  • 「ビジョンとはいかに創られるべきなのか?」
  • 「ビジョンは誰のものなのか?」
  • 「ビジョンはどんな抽象度が良いのか?」
  • 「ビジョンはいつ創ればいいのか?」

という問いがたくさん頭に浮かび、軽く集めただけの情報ではまったく腑に落ちませんでした。

言葉だけの上辺のビジョンを創っても何も意味がない。」ということだけは感覚的にわかったので、まずは「ビジョンとは何か?」という定義を自分なりにすることからスタートしました。

今回はその結果として、僕が考えるビジョンというものをまとめてみたいと思います。

ビジョンとはツールである

まず結論のひとつとして、ビジョンとは単なる”ツール”でしかないという結論に至りました。
そして、それは使い方次第で非常に強力な効果を持ちうるツールです。

当初、僕がビジョンという言葉を聞いたときには「ビジョンとは一部の天才的な選ばれた人間にのみ、神からの啓示の様に与えられるもの」や「崇高な理想としてあるべき世界の姿を示したもの」、「社会貢献のための壮大な目標」といったような大層なイメージを持っていました。

そして、まるでスティーブ・ジョブスに憧れた子供のように「俺は世界を良くする偉大なビジョンを打ち立てるんだ!」と、自分で自分を無理やり追い込み、”崇高な目的に生きようとするかっこいい自分”みたいなものを目指していました。
しかし、日に日に未来を示すはずの”ビジョン”とやらは僕の活力を全て奪っていったのを覚えています。
最終的には、少し鬱になりました。
※この辺の心境の変化は、また別の記事で詳しく書きます。

「なんか根本から違うかもしれないな、、、、」と、気づき始めたのはこの辺です。

そして引きこもって読書を進めている中で出会ったのが、ピーター・センゲによる「出現する未来」でした。
センゲはこの本で、ビジョンについて以下のような言葉を残しています。

”ここ数年、ビジョンという言葉が多用されるようになったが、本来の意味が置き去りにされている場合が多い。ビジョンは崇高な理想でもなければ、鼓舞するための言葉でもない。実用的な手段である。” (出現する未来 p170)

この観点に立つと、大事なのはどんなビジョンを創るかではなく、ビジョンという手段で何ができるか、ということになります。

そして、ビジョンを通じて、どんなコミュニケーションが可能か、どんな決断が可能か、どんな行動が可能か、そういう視点でビジョンというものを捉え直す必要があります。

良いビジョンとは「組織の目的達成に有効なもの」であるべきですし、ただただ形骸化し組織と個人へプラスの影響を産まないビジョンは無意味なものということです。

この気付き以降、僕はビジョンというものを過度に崇めるような見方は止めて、「今現在の自分自身/共に働く仲間/そして組織に関わる全ての人々に活力を与えてくれるビジョンはなんだろう?」という問いの立てかたをしています。

ビジョンの元となる2つの思想

「ビジョンとはツールである。」

その解釈に至ると、次の問いがでてきます。

「組織の目的達成に有効なビジョンとはどんなものか」という問いです。

ビジョンがツールである以上、そこには”ビジョンを使う技術”というものが存在し、戦略的な使い方があるはずです。

そしてそれを模索した結果見えてきたものは、「有効なビジョンの成り立ちと在り方に影響を及ぼしている2つの大きな思想があり、有効なビジョンはその組織の思想によって変わる」ということです。

その2つの思想は、「今のための未来か、未来のための今か」という時間における思想と「個人のための組織か、組織のための個人か」という人々に対する思想です。

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今のための未来か、未来のための今か

僕は、人生に対する見方は大別すると2つあると思っています。
「未来から逆算するか」「今から積み上げるか」です。

これは今と未来のどっちを重視しているのかという問いとも言えるかもしれません。

“未来の目標”の達成を目的とし”今”をその達成のために生きていく」という生き方と、「”今”にある価値観を維持して全力で生きた結果としての”未来”を迎え入れる」という生き方です。

今と未来は相互作用するので、ここまで極端な二元論で語るべきではないですが、大きく分けるとこの2つの思想の違いによりビジョンの創り方が変わってくると考えています。

組織のための個人か、個人のための組織か

二つ目が「組織のために個人があるのか」「個人のために組織があるのか」ということです。
前者では組織の目的達成のために手段として個人が当てはめられる傾向にあり、後者では構成される個人によって組織の在り方が変容していきます。

これも組織の規模とフェーズによって変わってきますし、「組織のための個人であり、個人のための組織でもある」という止揚が可能です。また、「意義のために組織と個人がある」とでも言えるかもしれません。

ただ、どちらかには重きが置かれていることが多いと思うので、今回はビジョンの有効性に影響のある軸のひとつとして挙げたいと思います。

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そしてこの2つの思想の違いによるビジョンの型を、便宜上以下の様に名付けてみました。

  • 「未来のための今」→目標達成型
  • 「今のための未来」→現在重視型
  • 「組織のための個人」→中央集権型
  • 「個人のための組織」→自律分散型

これ以降、この4つについて考えていきます。

※この2つの思想は本当に色々な考えと見方があると思いますし、安易な二元論は相互作用する本質の断片化をおこします。僕もこの分類に完全に納得してるわけではないですが、”ビジョンの有効性を検証するための分類”という視点では機能すると思うので、ここはこのまま進めて深掘りはまた別の機会でやります。

ビジョンの4つの型

それでは、目標達成型、現在重視型、中央集権型、自律分散型についてひとつずつ見ていきます。
※違いをわかりやすくするために説明を白と黒に全振りします。実際はどんな組織もグレーです。

目標達成型のビジョン

目標達成型のビジョンは、「未来のために今がある」という思想に準拠しています。
定めた目標の達成こそが絶対であり、それにより現在とそれ以降の行動が規定されるべき、という見方です。
将来の目標を明確に定め、それをブレークダウンし、10年後>5年後>1年後>今週>明日と計画を立てていく、そんな思考になります。

この場合には、ビジョンは未来の設計図であり目的地となる役割を担います。
そのためビジョンには明晰さが求められ、目的地の具体的な数字やそれを達成するための現実的な計画が必要不可欠です。

そして、この種のビジョンが機能すると、現在の最適化に非常に役立ちます。
ビジョンが達成されるかどうかという視点から人員・戦略・組織文化が計画されるので、その達成のために無駄なものは排除され、必要なもののみが残り、組織は目標へ一直線に突き進みます。
また、「現状の維持では未来の目標が達成されないかもしれない」という危機感が生まれた際には、現状を大きく変える強い力が生まれるので、組織を変化させていくことができます。

ただし、未来の目標を設定するビジョンには、落とし穴があります。
まずは計画された事以外の活動ができなくなり創造性が制限されることです。
「当初計画に無かったが、やってみたら後々役立った」なんてことは誰にも経験があるんじゃないでしょうか。
「何が無駄で何が無駄じゃないか」という問いは非常に複雑なものですし、ましてや世界の変化が激しい現代では未来を予測し今を計画することは非常に困難かもしれません。
目標達成型のビジョンはこういった、「過度な現状の最適化による未来の可能性の損失」を生み出す可能性があります。

また、目標の設定は組織の成長を助けてくれますが、”そもそもその目標が正しいとは限らない”という点にも注意が必要です。
ビジョンの設定は、創造的な活動であると同時に危険な作業でもあります。
この目標達成型のビジョンが、自分のものではなく他者の成功や組織の本来の目的以外のものから創られた場合、組織はその進捗が進むにつれ次第に違和感や矛盾を体験することになります。

そして最後によくあるのが、「私たちは○○をビジョンに掲げています。そして、そのビジョンの達成のためにまずはお金が必要なので、ビジョンとは全く関係ないが△△の事業から始めています」というものです。
これはビジョンと日々の活動に大いなる乖離を生み出し、文化の醸成を妨げます。

上記のような問題が発生すると”そもそもの目指すべきものを完全に刷新する”という作業が必要になります。

そして、組織の一貫性に矛盾が生まれ、これまでの組織は一度崩壊するでしょう。
目標達成型のビジョンにはそんな危険性もあります。

現在重視型のビジョン

現在重視型のビジョンは、「今のために未来がある」という思想に準拠しています。
今の在り方・価値観に生きる瞬間瞬間こそが重要であり、その生の連続の延長線上としての未来を見据え、起こった未来を迎え入れるイメージです。

現在重視型のビジョンでは、生み出されたビジョンそのものよりも、それを生み出すプロセスの方が重要となる、という見方ができます。

マーガレット・J・ウィートリーは彼の著書:「リーダーシップとニューサイエンス」の中で以下の様に述べています。

この瞬間に存在するというのは、目的を持たずに行動するとか、計画を立てずに当てもなく流される生き方をするという意味ではない。計画や目的が出来上がるまでのプロセスにもっとじっくりと専念したほうが良いということである。… 健全なプロセスこそが、よりよい人間関係をつくり、組織のアイデンティティを明確にし、現状についての情報量を増やす。こうしてできあがった新しい関係を通じて、組織はもっと健全になる。今何をすべきか知る能力が向上し、協力してクモの巣のように弾力と柔軟性がある組織を築いていけるだろう。(リーダーシップとニュー・サイエンス p222)」

この時のビジョンとは、「未来のあるべき姿を固定化するもの」ではなく「絶えず変化する今を強く生きるためのもの」となります。
ビジョンについての対話からお互いの意味を見出し合った関係性こそが、今この瞬間に感じる違和感や希望を感じ取って未来に向けて一歩踏み出せる組織としての強さとなります

ただし、逆に不健全なプロセスが生じた場合や未来のイメージが弱すぎる場合、現状に固定化されるという怖さもあります。
例えば、安定と現状維持に組織が傾くと、現状のコンフォートゾーンから抜けられず未来は今が維持されたままの結果となります。
変化すること、成長すること、挑戦すること、こういった判断軸を元に目の前の判断を繰り返さなければ、目標達成型のような大胆な結果は得られません。

またこの種のビジョンを維持するためには、そのビジョンの根拠となった価値観に則した日々の行動と結果が非常に大切です。
この価値観から矛盾が生じた場合、ビジョンは力を失います。

中央集権型のビジョン

中央集権型のビジョンは、「組織のために個人がある」という思想に準拠しています。
中央集権と呼ぶと組織の権限委譲の話の様に聞こえますが、僕がここで言いたいことは「意義の中央集権化」とでも表現したほうが近いかもしれないです。

ゴールデンサークルのTED講演で話題になったサイモン・シネックがその著書「WHYから始めよ!」で以下のように語っています。

「カリスマ性は、WHYの明晰さから生じる。自分よりも大きな理想に絶対的な確信をもつことから生じるのだ。… 人の心を揺り動かし、感動させることができるのはカリスマだけだ。そして、そこから忠誠心が生まれる。」

また、ゴールデンサークルのWHY>HOW>WHATを組織構造に当てはめ、

「(ゴールデンサークルを3次元にした)円錐形は、会社や組織をあらわす。システムのトップ、つまり円錐形の頂点はWHYをあらわしている。これがリーダーであり、会社の場合はたいていCEOだ。その下のレベル、HOWのレベルには幹部がいる。リーダーのビジョンに感銘を受け、それを実践する方法を知っている人たちだ。…その下にWHATのレベルがあり、ここで実力が試され、真価が問われる。」

とも述べています。

つまり、トップのカリスマ的リーダーが明確で壮大なWHYを打ち出し、そのカリスマが創ったビジョンに忠誠を誓えるかどうかで人を集める。
忠誠を誓った人々は、それを信じて目の前の活動に取り組む。
そんなイメージです。

この種のビジョンの場合は「どれだけ人々を魅了できる壮大なビジョンなのか?」といったことが大事でしょう。リーダーが指し示したビジョンが魅力的であればあるほど、多くの忠誠心が得られます。

ただ、1点懸念することがあるとすれば「人々を魅了しすぎるカリスマ性と壮大なビジョンは、人々に自己欺瞞的な忠誠心を持たせる可能性がある」ということです。

人間は意義を求める生き物ですが、それは外部から与えられるものではありません。
意義はその人自らの体験を通じて育てられるものです。

カリスマ性を持ったリーダーは、あたかも”それが自分自身のビジョンでもあるかのように洗脳する”ほどの強さを持ちえます。

「そのビジョンに意義があると信じられるかどうか?」と「そのビジョンが”あなたの”モノであるかどうか?」は別の問題です。

素晴らしい壮大なビジョンであれば、それはなんかしらの意義があると多くの人が信じられるものでしょう。
ただ、それを自分のモノでないにもかかわらずに、あたかも自分の使命のように振る舞ってしまうと、その人にとっては外部化されたビジョンとなり長期的には燃え尽きを引き起こします。

人々をビジョンでインスパイアする際は、それが盲目的な宗教ではなくその人にとっての哲学であることが大事です。
宗教化したビジョンは絶対的価値としての「カリスマリーダーのビジョン」に忠誠を誓い信じさせることによって人を動かしますが、哲学では自分の頭で考えることによって人が動きます。

”そのビジョンを自分毎として捉え、忠誠を誓える人”が集まるうちは素晴らしいですが、組織が拡大した際に”すがりつく意義を求め、ファッションのようにそのビジョンに染まりに来る人”がいないよう、十分に注意する必要があると思います。

自律分散型のビジョン

自律分散型のビジョンは、「個人のために組織がある」という思想に準拠しています。
個々人それぞれがビジョンを持ち寄り、その実現のために組織が生まれるイメージです。
サイモン・シネック風に言えば「WHOから始めよ!」というような感じでしょうか。

このビジョンはトップが決定し組織へ浸透させるのではなく、組織内の個々人から湧き出るものを明らかにするプロセスが必要です。
そしてメンバーの傾聴力、判断を保留する能力、内省する能力が求められます。

この種のビジョンが機能すると、自立分散型のビジョンは個々人のビジョンを内包する形で生まれるので、個人へ大きなエネルギーを与えるものとなるでしょう。
さらに、全てのメンバーが意味を見出したそれぞれの活動を紡ぎ、エネルギーを集約させていく場としての役割をビジョンが担い始めます。
これはリーダーによる組織の管理ではなく、コンセプトによる組織の管理ということです。

しかしこの種のビジョンの難しい点は、全ての人が自らの意義とビジョンを見いだせるかどうかということと、それをリーダーが組織のものへと昇華できるかどうかということです。

VISAの創業者にして名誉CEOであるディー・ホックはその著書「混沌と秩序」の中で以下の様に述べています。

人々に目的と原則を与える方法はない。目的と原則がなければ、自己統制は不可能である。唯一できることは、人々の自己統制の能力を目覚めさせることだ。そのためには、真のリーダーの活躍が必要となるだろう。(混沌と秩序 p136)」

共同体がどこに導かれるかは、共同体を構成する個人の価値観や信念にかかっている。
真のリーダーとは、共同体の総意を要約できる人物である。(混沌と秩序 p105)」

これまで理想とされてきた「カリスマ性を持った壮大な理想を掲げるリーダー」ではなく、「人々が意義を見出すことを啓蒙し、それを組織のものとしてまとめ上げられるリーダー」がいれば、自律分散型の素晴らしいビジョンが出来上がるはずです。

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以上、4つの型とその特徴でした。

この4つは完全にどちらかを選択するというものではありませんし、両立させたり使い分けられるものです。
単純な良い悪いではなくリーダーの特性や時代の要請もあるでしょうし、創業時はみんなで創るが成長したらそれをみんなへ浸透させるだけ、というような組織も多いはずです。

この4つのフレームは”真実”ではなく、このフレームもまた組織のビジョンをみるためただの”ツール”です。

なので、「そのビジョンがあなたの組織に何をしてくれるか」という問いに対する答えを探すレンズとして、このフレームを使ってみてもらえたらと思います。

絶対条件は一貫性

また、上記4つに共通することは、有効なビジョンには思想と行動の一貫性が絶対条件だということです。

どんな思想と型であれ、ビジョンというものが有言実行であること、ビジョナリーな会社のメンバーは全員ビジョナリーであり、そのビジョンが本物であることが問われます。
一貫性ある行動は組織としての自我を育み、組織としての自我は個を力づけます。
それこそがビジョンがツールとして有効となる絶対条件です。

そうでない組織では、ビジョンが形骸化し力を失います。
形骸化したビジョンは、組織内の自我に矛盾を起こし、文化を崩壊させます。
文化の無い組織は、意義の関係性ではなく契約と規約で繋がる結果となり、人々の活力を奪います。

まずは、リーダーが徹底的に本音から語れるビジョンを語ること、そしてそれを組織と共有し、行動と決断の隅々まで行き渡らせることが大事です。

そうすればビジョンは、今と未来、組織と個人、そして自分と世界を、意味という接着剤でつなげる一種のコミュニケーションツールとして機能すると思います。

僕の思想と願い

僕の願いのひとつは

  • 全ての人がそれぞれのユニークな価値観・ビジョン・情熱を持っていると信じているので、それらをそれぞれが追い求めてほしい。
  • そのユニークなエネルギーを統合し、社会へより大きな力として還元させるための組織を創りたい。
  • その結果として、人や社会のために意義があると信じられる多様な影響を組織として最大限残したい。

というものです。(他にもいっぱいあります。)

ビジョンっぽくすると「全ての人々が己の情熱に生きる世界」のようなイメージにも近いでしょうか。

なので、僕は「個人のための組織」にしたいという思想の方が近いです。
また、これまでの経験上「今のための未来」という考えのほうが、瞬間瞬間を楽しめますし、想定外だが予想以上の未来に出会えることがわかっています。

※今回はここはさらっと済ませますが、なぜ「個人のための組織」「今のための未来」の方が良いのかという記事を今度詳しく書きます。

なので、僕は組織のビジョンを創ってその達成のために人とリソースを集めるというやり方ではなく、まずは自分自身がどう在りたいのかというプロセスを規定し、そのプロセスを共有できる仲間を集め、その結果としてたどり着ける最大限のビジョンをみんなで描きたいと思っています。

情熱に生きる、闊達自在に生きる、それぞれが最大限成長する、そして社会と人々へ貢献する。
そういったプロセスを維持しながら進化し続ける組織であり、そのはるか先にぼやっと見えるイメージをビジョンとして共有できたとき、個人の単なる集まりではなくビジョナリーな組織として、大きな成果を生み出せる組織であれるんだと考えています。

価値観維持型x自律分散型なビジョンを創るプロセス

最後に。

僕が創業者であるインキュビットは創業時が1人だったということもあり、組織づくりというのが目の前の課題です。

そこで、先程書いたとおり「今のための未来」「個人のための組織」という思想を基礎にした、ビジョンを創るプロセスを仮説段階ではありますが書いておこうと思います。

これは、これから僕が実行することであり、結果がどうなるかわかりません。
結果がでてき次第、また追って記事を書きたいと思います。

■これからやること

1. 組織の中の全員が覚悟を決める

まずはこれが一番大事だと考えています。
魂の入ったビッジョンを創るプロセスには、自我の破壊と再生が伴います。
そこには

  • 自分自身の生き様や組織としての在り方に一切の妥協をしないという覚悟
  •  ありのままの自分自身を他者と共有する覚
  •  自分自身を再構築していく痛みに向き合う覚悟

が必要です。
組織として本当に何がしたいのか、組織としてどう在りたいのか、そしてそのためになぜビジョンが必要なのか、徹底的に腹を割って本音を伝えあう覚悟を決めてから臨みたいと思います。

2. 「対話」について対話する

ここでいう「対話」とは、デイビット・ボームの定義をベースにしています。

「議論」とは違い、結論は決めず、目標を持たず、判断しないコミュニケーションです。
そして、「お互いの意味を目の前に掲げ、その思考を観察し、集団としての共通意識を見出すこと」が目的になります。

ありのままをさらけ出せる”弱みを見せ合える風土”が無ければ、表面的な会話に終始してしまうのは目に見えているので、まずは「だれが、なぜ、どう対話するのか」ということを対話し、対話する風土や関係性づくりをしたいと考えています。

※ここから先は私個人の想定なので、このフェーズでの対話の結果変わる可能性が大です。

3. 対話を通して共通意味が浮かび上がるのを待つ

1と2が終わると、組織として創りたい未来を語る土壌がやっと出来てくるはずです。
この段階から、”組織として”どう在りたいのかの対話を始めます。

先程書いたとおり、僕はみんなに自分らしく生きてほしいと思っているので、そのためには「組織のみんながそれぞれの情熱や動機を把握している」という状態が必要だと思っています。
みんなが自分と向き合い、深く内省し、自分について共有できる場を通して、全員の価値観の共有をしていきたいです。

ただし、言語化にはものごとの本質を捉えきれない場合や、形骸化する場合が多々あるので、シンボルとしてのテキストを共有するだけでなく、対話により日々共有していくようにしたいと思います。

4. プロトタイピングする

対話で出てきた世界観は、言葉のままで終わらせず何かの形でプロトタイピングするのがいいと思います。
模造紙かなにかでビジュアルで書けたりすると良いでしょう。
特にインキュビットは英語話者/日本語話者がいるので、言語ではなくイメージを共有していこうと思います。

5. 今と繋げ、行動する

ビジョンのイメージが本当に熱量のある場から生み出すことができれば、それは組織の人々が”現状の違和感”に気づく手助けとなります。
その違和感に敏感に反応し、個々人に今を変えていく柔軟性と自由をもたせれば、組織は自然とあるべき姿に成長していくはずです。

以上、全体としてかなり微妙なニュアンスの書き方が多くなってしまいましたが、インキュビットではこの仮説をベースに組織内での対話を創っていきたいと思います。

この感覚を共有しつつ、チームみんなで頑張ってみます!

まとめ

以上、ここまで読んでくださってありがとうございました。

まとめると

  • ビジョンはツールである
  • 大事なのはどんなビジョンを創るかではなく、ビジョンという手段で何ができるか
  • ビジョンの有効性は組織の思想で変わる
  • 目標達成型、現在重視型、中央集権型、自律分散型がある
  • どの型にしても一貫性が絶対条件

といったところでしょうか。

いざ行動しようとすると、ビジョンを有効活用するって本当に難しそうですね。
でも、だからといって妥協するような人間にはなれないので、また真面目に真摯に頑張ろうと思います。

みなさんも、自社がどういう思想を持っているのか、会社のビジョンは組織に対して何をしてくれているのか、一度整理してみると良いかもしれません。

※ちなみに、今後以下にテーマについて書いていきたいと思います。
– 組織とは何か〜今の時代は生物的な観点から組織を見直すべき〜
– 意義のシナジーと多角化戦略
– 僕がなぜそこまで個々の情熱にこだわるのか
– U理論と自己変革の技術
– イノベーションのための基礎要素
– パラダイムとは何か

以上。

 
Naoki Kitamura

株式会社インキュビット(Incubit inc.) Founder & CEO。92年生まれ。 高校中退→引きこもり→大学@カナダ→大学中退→起業@札幌→起業@東京